カセットテープを聞こう
1979年にソニーがウォークマンを発売してから、カセットテープを歩きながら
聞けるようになりました。
そしてその需要が一気に高まり沢山のモデルが発売されました。
更にメタルテープが発売されその数年後にはCDプレーヤーが発売され、
それらの音源やアナログレコードをカセットテープに録音して通勤時にウォークマンで
聞くというスタイルが出来上がりました。
カセットデッキは時代とともに音質向上傾向を示しますが機能等の進化は
あまりありません。
大きく変化したのはノイズリダクションシステムです。
これはカセットテープのヒスノイズをいかにして抑えるか?
というヒスノイズ(新品の無録音テープ再生時に聞こえる「サーー」というノイズ)を
除去するための技術で電子回路として搭載されています。
それらを踏まえて初心者にも分かりやすくカセットデッキを解説します。
一般的にカセットデッキはヘッドの数で二分されます。
ヘッド数による分類
録音/再生共用タイプ(2ヘッド)
カセットデッキのヘッドは録音/再生/消去と3つの機能が必要です。
一つのヘッドで録音と再生両方を併用しているものが2ヘッド機と呼ばれます。
録音/再生+消去
音声回路とヘッド周りの機構がシンプルに構成できるので中級機以下の価格帯に
多いです。
録音/再生独立タイプ(3ヘッド)
2ヘッド機の録音/再生用のヘッドが独立しているものが3ヘッド機です。
見た目は2ヘッド機と同じ位置にヘッドがあり似たような作りになっていますが
センターヘッドが左右で分かれておりそれがくっついて一つのヘッドのように
なっています。
ピンチローラというゴム製のテープを押さえるローラーがヘッドの左右に二つ
見られますが、2ヘッド機は右側一か所だけです。
ヘッドの左右両端でテープを押さえるのでテープ走行が安定します。
高級機に使われる技術です。
特殊なタイプ
オートリバースデッキ
片面の録音/再生が終わると、テープエンドでヘッドが自動で180度回転して
テープの反対面を継続録音/再生する事ができるカセットデッキです。
設定で複数回リバースできるタイプや、カセットテープ両端のブランク部分に入ったら
直ぐにリバースするクイックリバースタイプなど趣向を凝らしたものが存在します。
メリットデメリット
2ヘッド機のメリット
2ヘッド機の特徴は価格が安いことと扱いやすさです。
中古市場でも2ヘッドのカセットデッキは種類が豊富なことでしょう。
既に録音されているミュージックテープの再生がメインなら2ヘッド機で十分です。
後に解説しますが3ヘッド機の特徴は録音時に威力を発揮するからです。
そしてヘッド数による音の良し悪しはありません。
但し2ヘッドモデルは中級機以下に多いため音声回路の質が3ヘッドモデルより
低いか同等のため音質には差があります。
デメリット
録音/再生とヘッドを共用しているのでどちらか一方の動作しかできません。
この為録音しながら再生ができません。
片面全てを録音しないとそのカセットテープの再生ができないことになります。
録音時にカセットテープの特性を十分に生かせない。
これは3ヘッド機特有のキャリブレーション機能が付いていないためテープに合わせた
録音レベルの微調整ができません。
キャリブレーションとは、カセットデッキ内蔵の発信器より基準信号を発生させ、
これを基準レベルで録音して再生時に同じレベルで再生されるか?
という機能で、レベルが低く再生される場合は録音時と同じレベルになるよう
つまみを回してレベルを上げて補正するものです。
カセットテープによりこのレベルダウンはまちまちなので録音毎に行うことで
そのカセットテープにあった最適な録音が出きます。
アナログの世界にはこう言うことが多々ありデジタルに慣れると
煩わしくもありますが、これがアナログの楽しみということも言えます。
以上のことから2ヘッド機のデメリットは主に録音時に影響していることが
お分かりいただけたと思います。
※ 2ヘッド機はピンチローラが一つ 真ん中のヘッドが録音再生用 左が消去用。
※ 3ヘッド機は真ん中のヘッドが左右独立している 右が再生用。
※ 左右二つのピンチローラはクローズドループデュアルキャプスタンと呼ばれる。
3ヘッド機のメリット
上記で説明したとおり
録音しながら、再生可能なため録音が適切に行われているかモニターが可能です。
そしてカセットテープの個性に合わせた最適な録音調整ができることです。
高級機(ハイエンドモデル)は音声回路のクオリティが高く、その為高級機に多い
3ヘッド機は音質が良い傾向があります。
デメリット
キャリブレーションは優れた機能ですが、カセットデッキを扱ったことのない方には
説明書がないと適正レベルなどがわからず難しいです。
キャリブレーションを使わず録音は可能ですがこうなると2ヘッド機と変わり
ありません。この場合でも録音モニターはできます。
3ヘッド機は中級機以上高級機に多いですので中古市場で値段が高めです。
カセットデッキのノイズリダクションシステム
民生用としてはドルビーBから始まり、時代とともに新しいタイプが生まれてきました。
メーカー特有のタイプや共用タイプなど複数存在します。
殆ど互換性がありませんので注意が必要です。
※ノイズリダクションを使わない録音再生は、この互換問題は一切関係ありません。
下記は民生用カセットデッキのノイズリダクションの互換表です。
ノイズリダクションシステム互換表
縦 録音されたカセットテープ 横 再生するカセットデッキのモード
ドルビーB | ドルビーC | ドルビーHX-PRO | ドルビーS | adres | ANRS | dbx | |
ドルビーB | 〇 | X | X | X | X | 〇 | X |
ドルビーC | X | 〇 | X | X | X | X | X |
ドルビーHX-PRO | △ | △ | 〇 | △ | △ | △ | △ |
ドルビーS | ▲ | X | X | 〇 | X | ▲ | X |
adres | X | X | X | X | 〇 | X | X |
ANRS | 〇 | X | X | X | X | 〇 | X |
dbx | X | X | X | X | X | X | X |
▲ 簡易再生として可能
△ HX-PROは録音時のみなので、再生時は他のノイズリダクションをOFFにすることで再生可能
※adresは東芝(Aurex)のみ搭載
※ANRSはビクターのみ搭載 ドルビーBと完全互換
※ドルビーBは年代にかかわらず全機種に搭載
※複数のノイズリダクション搭載カセットデッキも多く、切り替えることで再生可能となる。
ノイズリダクションシステムの推移
1970年代 B-----------------------------------→2014年
1981年頃 C ------------------------→2005年
1989年頃 HX-PRO-------→1997年頃
1991年頃 S--------→2001年
1981年 adres--→1983年
ドルビーC=1981年頃以降搭載
ドルビーHX-PRO=1989年頃以降搭載
ドルビーS=1991年以降搭載
時代が進むにつれてドルビーの種類が増えていきます。
カセットデッキのヘッド清掃
綿棒に専用クリーニング液を浸して拭き取るというのが当時のスタイルでしたが、
近年げき落ちスポンジなる製品があり、これを1センチ弱程度のサイコロ状に切り竹や
樹脂製のピンセット(金属製は不可)などでつまみ表面を軽く左右に拭くだけで十分です。
キャプスタン(ピンチローラの上側から突き出ている金属製の軸)も同じやり方です。
ヘッド、キャプスタン清掃はカセットデッキの電源を切って行います。
中古カセットデッキは既にヘッドの摩耗が進んでいるのでゴシゴシ擦らない方が
良いです。
ピンチローラ清掃はヘッドと同じで、かなり薄めた食器洗い洗剤を浸して
テープの跡が薄くなるまで優しく擦ります。
仕上げに水を浸した綿棒で洗剤成分を拭き取ります。
カセットデッキの選び方
二つのポイントがあります。
一つ目は用途として再生がメインなのか録音も行うか?
二つ目はノイズリダクションに拘るか?
前者は非常に重要です。
先に説明しましたが再生がメインなら2ヘッド機をターゲットにするのが良いでしょう。
予算的にも安く済みますし、中古市場も沢山の機種が出ています。
録音も行うのであれば3ヘッド機がターゲットになりすが、3ヘッドは高級機仕様
ですので価格が上がります。
しかし、発売当時も高かったので大切に扱われてきた機種が多いのも特徴です。
二つ目のノイズリダクションですが、近年出回っている新品のカセットテープは
ほとんどがローノイズ(Type1)テープだと思います。
ローノイズテープは高域の特性が他のテープ(TypeⅡ/TypeⅢ/TypeⅣ)より劣ります。
因みに特性が良いのはこの逆です。
このことからノイズリダクションは有効と思います。
例えばボーカルメインの静かな曲をノイズリダクションを通さず録音して
再生すれば「サーー」というテープのヒスノイズが音楽と一緒に聞こえます。
これをどう感じるか、ということでしょうか?
もしノイズリダクションを必要と感じるのでしたら、多くのドルビー搭載機を
ターゲットにするのが良いと思います。
Aurexのadresは優れたノイズリダクションですが互換性がないのと機種が少なく
型が古いのがネックです。
又メタルテープを使用するのでしたら対応しているか確認が必要です。
おおよそ1980年~のモデルで対応しています。(一部1979年製もあり)
おすすめのカセットデッキは?
用途と年代がカギとなっていることはお分かりいただけたと思います。
ここでは最初に、外見で大雑把に年代を知る方法を書きます。
本体正面パネルが
銀色のタイプは1970年代~1982年頃
黒いタイプは 1983年~1991年頃
ゴールドは 1992年~
当時の流行に合わせてオーディオ機器のカラーが変化していますので覚えておくと役に立ちます。
当時の価格的な位置づけは、あくまで目安として
入門機 ~54800円程度
普及機 59800円~7万円
中級機 7万円~9万円
高級機 9万円~
用途と予算で絞ることになりますが、おすすめとしては比較的新しいモデルが
良いです。
特にバブル直前の1987年~1989年辺りのモデルは各社の競争が激化しており、
良質なパーツをふんだんに使い、ハイコストパフォーマンスモデルが多いです。
そして90年代になるとMDの登場やCDも携帯型などが存在しておりカセットテープに
録音して屋外でウォークマンで聞く、というスタイルが減ってきたため
カセットデッキの使用頻度がマイナス傾向になったと想定されます。
1987年~のモデルは比較的程度が良いものがまだまだ見つけられます。